世の中には複数の香木が存在していて、それらを分類するために用いられた「六国五味(りっこくごみ)」について解説します。
六国五味(りっこくごみ)とは
室町時代、聞香(もんこう)が盛んになるにつれて、それぞれに異なる香りを有する香木に、繊細な識別が求められるようになりました。そこで、香りの分類法として体系づけられたのが六国五味です。
六国とは
香木を産出地によって分類するための指標です。
名前 | 読み方 | 産出国 |
---|---|---|
伽羅 | キャラ | インド |
羅国 | ラコク | タイ,ミャンマー |
真那賀(真南賀) | マナカ | マラッカ |
真南蛮 | マナバン | マラバル |
佐曽羅 | サソラ | サッソール |
寸門陀 | スモタラ | スマトラ |
五味とは
香りで分類する指標で、日ごろ身近に体験できる味覚や、それに伴う匂いの感覚になぞらえて表現しようと試みたものです。
名前 | 香り |
---|---|
辛(カライ) | 丁字いがらきようなからさ |
甘(アマイ) | 蜜を煉る香の甘さ |
酸(スッパイ) | 梅のような酸っぱさ |
苦(ニガイ) | 汗とりのような塩からさ |
鹹(シオカライ) | 薬を煎じたような苦さ |
ひとつの香木に対して必ずしも香りが一味とはことはなく、複数の味を持つものが多く五味それぞれの強弱・組み合わせにより複雑な香りを醸し出します。
香木に熱を加えると最初に甘が立ち、後から酸が立ってくるなど経過時間により五味も変化していきます。
六国五味と香道
六国五味の誕生は、そもそも香道の統一規格を制定することにあります。すべてが共通の規格で語られることで香道の発展に重要な貢献を果たしたといえます。
ただしかし、上記の指標は主観に基づくものであり人間の感性により変わってしまう点は統一規格としての課題です。科学的根拠があるわけではないので客観的な基準にはなりません。
また香木の性質上、同じ種類でも香りは微妙に異なったり、逆に産地が違っても似た香りをもつ物もあるので、判別法とはいっても完璧ではないです。